〝おお!! 探したぜよっ
こがあ所に居たとはな~〟



「うーん…」



〝ん?
おまんさん すげえ別嬪さんじゃなー あっこれからわしと一緒に何処か行かんか?〟

〝行かんっ〟




「ん゛ー 誰だ?どっかで訊いたことある声だったんだよなー…」


最近訊いたことのある… 喉元まで出かかっているがあと少しの所でいつも思い出せずもどかしい思いをしている鈴蘭。


「それにあの顔…なーんか見覚えあるよーな ないよーな…」


〝此所〟に来てから? いや 〝現代〟に居たとき?

あの男に逢って数日、鈴蘭は中々はっきりとしない記憶と格闘していた。


「あの訛り… 何処の方言だろう?」


〝おお!! 捜したぜよっ
こがあ所に居たとはな~〟


ん? 捜した…〝ぜよ″?


「〝ぜよ″って確か… あっ〝坂本龍馬〟! てことは…土佐弁? 土佐は今の高知県だから…って高知に知り合いなんていないよ…」


―――――でも、多分あの人は土佐の人で間違いないと思う
あの訛り…大河ドラマとかでよく訊いた憶えあるし
でも…


「あ゛あ゛ーーーーー もうっ駄目だ!!」


そう叫ぶと、鈴蘭はパタンと後ろへと倒れ込む。


「全然思い出せない…」


土佐訛りの男の事を思い出せず、一旦忘れようとしても一度気になり出すと中々忘れることも出来ず、かと言って少しも思い出す事も出来ない。
それ処か、雛菊達三人の行方も全く掴めず時間だけが過ぎ、悶々としている鈴蘭だった。