――【HEART】――


気づかないふりが
昔から得意だった。

小さい頃から
人の機嫌を取って、
どんなときも笑顔で…

だけどそんなあたしを
あなたは優しく
包んでくれたよね



「アリス!行くよ?」

突っ伏して机で寝ていたあたしに里緒が声を掛けた。
ひとつ伸びをして、彼女の整った顔立ちに目を向ける。
綺麗に手入れされた髪が、ふわりと香る。

「んー?今日なんかあんの?」

携帯のスケジュールでチェックするが、
今日の予定はゼロなはずだ。
きょとんとするあたしに、里緒は悪戯っぽく笑った。

「しゅうちゃんたちがさ、東高のやつらと飲み会するんだって!
楽しそうじゃん」

ああ、そういう事か、と納得する。
里緒は容姿端麗、女のあたしから見てもずば抜けて美人だ。
そしてそれを本人も自覚していて、かなりの男好きである。
勿論、レベルの高い男としか関わらない。
それが彼女らしいところでもある。

「明日から3連休だしさ、行こうよ!ね?」

可愛らしく首を傾げられて、あたしはしょーがないなと笑顔を作った。