甘いバリトンに誘われるように、私は彼に近づいた 彼が低めのブロック塀に座っているので、下から見上げられる形になる さっきまで、涙に濡れていた瞳は、ビー玉のように冷たく乾いていた そんな、彼の切れ長の目に今、私が映っているんだ と思うと、自然に頬が火照るのが分かった 「えっと、その、」 赤い顔を隠そうと慌てる私なんてお構いなしで、彼は話しだした