そこまで話すと、私はあることを思い出した 「あ、そうだ!あなたに聞きたいことがあったの。あなたの名前は………」 ずっと黙って私の話を聞いていた彼が、切れ長の目を細めて微笑んだ あの夜のように、甘く 「君は、知らなくていいんだ」 「…え、……?」 彼は甘く微笑みながら、大きな手で私の目をすっぽりと覆った そして 「僕のことは忘れて」 優しくそう囁いた どうして?って聞きたかったけど 手のひらから伝わる彼の体温と、甘いバリトンが余りにも心地好くて、 私はゆっくりと意識を手放した