「俺、病院に毎日行ったんだ。雪菜を一目でも見たくて、話したくて…。俺が13回目の誕生日を迎える時、この香水を雪菜にもらったんだ。雪菜の友だちのお父さんが柴崎さんで、俺のためにもってきてもらったんだってさ。」
「うん…。」
柴崎さんは、聖のことを知っていたんだ。
子どもがいるっていうのを教えてくれた時の子どもって雪菜ちゃんの友だちだったんだ
。
「それから1週間後、病院にいつも通りに行ったんだ。そしたら、たまたま雪菜が検査行ってるらしくて、病室には雪菜の両親と医者が話していたんだ。そこでさ、最悪なこと知ったんだよ。''あと3日しか生きられない''って…。何で早く言わなかったのか、悔しくて病室に入って医者に激怒したんだよ。その日は、家に帰って泣いてた。」
「うん…。」
いつの間にか、聖は泣いていた。
過去を話すのは辛いんだよね。
私もわかるよ。もう、寂しくないと思っていても、
心のどこかでは寂しいと思っている自分がいて、
いざ過去を話そうとすると辛くて話せないんだ。
「次の日、俺、雪菜に告白しようと病院に行ったんだ。それで…。」
「それで…?」
分かる、聖の泣いている顔を見ていると嫌でも分かってしまう。
「俺が行った時にはさ、雪菜は星になってたんだ。3日しか生きられないって医者はその前日言ってたのに、次の日に星になったんだ。俺、医者を恨んだ。そして世界も。神様が大ッ嫌いになった。病室を出ようとした時さ、雪菜のお母さんから手紙をもらったんだ。」
「雪菜ちゃんからの手紙だったの?」
「そう。そこに流れ星のカケラのことが書いてあって、他にもいろんなことが書いてあった。」
「うん…。聖、話してくれてありがとう。」
私もいつの間にか泣いていた。
聖も辛かったんだね。
「雪菜が消えた後、この高校に入って頭がおかしくなったと思ったんだ。雪菜に似ている優貴がいたから。最初は、優貴を雪菜と重ねていたんだ。何度も悩んで何度も空に問いかけた。そして、やっとわかったんだ。」
聖は、涙を拭いて私の方に向く。
私も涙を袖で拭って聖を見つめる。
「俺、雪菜じゃなくていつの間にか…優貴が好きになってたんだ。」


