ガラっ…


「あぁ、こんにちは。桜田さんのお友達ですか?」

お医者さんが話しかけてきた。


「私は、桜田さんの主治医の北原です。」


ちょっとこちらへ、と言われた。


そしてあたしたちは病室を出た。


「…桜田さんは記憶喪失のようです。事故のショックであなたのことを思い出せないようです。でも、なにかショックがあれば記憶も戻ると思うのですが…。」






記憶喪失……





しかもあたしの記憶だけ…?


「あのっ、今までのあたしとの思い出もすべて忘れてるんですか…?」


北原先生は無言で首を縦に振った。



「…ショックって…どういうショックですか…」


「……彼はよく亜美、という名前を口にするんです。家族の方から聞いたんですけど、亜美さんは亡くなってらっしゃるそうですね?」

「…そう、なん、ですか…?」


北原先生の目が、知らなかったの?という風に見開かれた。