空唄 ~君に贈る愛のうた~

「これ、すごいおいしい。
トマトの味がいい感じで!」


笑顔でそう言うと、由紀恵は斗真と顔を見合わせると


「本当?よかったわ」


と、嬉しそうに笑った。


―やっぱり、気……使わせてるなぁー……


“あの事件”以来、両親との間にぽっかりと穴が出来たみたい。

どうしても、距離を感じてしまう。


「のん……、花音?」

「んっ?」


自分の世界に入っていたので、斗真の声で我に返った。


「ごめん、ぼーっとしてた。
もう一回言って?」

「花音、一誠くんのところでバイトするって
和彦から聞いたんだけど」

「えっ?あぁ~、うん。……しちゃまずかった?」


和彦とは、おじさんの名前だ。

家族ぐるみで仲が良いので、父も母も相手の家族も
下の名前で呼びあっていた。