空唄 ~君に贈る愛のうた~

走って家まで帰る頃には、辺りも少し薄暗くなっていた、


―あちゃー、なんて言おうか……


頭の中でそんなことを考えながら、門を開けて玄関のドアを開ける。


「ただいまぁ~……」


遠慮がちに言うと、リビングの扉が勢いよく開いて


「花音っ!もう遅かったから、どうしたのかと思ったわ」


中から母、由紀恵が心配そうな顔で出てきた。


「ごめん、ちょっと寄り道してたんだ」


困ったように首を傾げて、そのままの理由を述べると


「そう……」


何か言いたげだったが、由紀恵はそれ以上は何も言わなかった。


―わかってる。言いたいことは、わかってるよ……


「まぁ、早くあがりない。ご飯の準備出来てるから」

「はーい……ねっ、お母さん」

「うん?」


微笑んで向き直った由紀恵に、


「大丈夫。私はいなくならないよ
……着替えてくるね」


そう言うと、花音は由紀恵の方を見ずに二階へと駆けあがった。