空唄 ~君に贈る愛のうた~

一応、辺りを見渡し誰もいないことを確かめる。


「誰も……いないね」


確かめてから大きく、静かに息を吸う。

そして、次こそが花音にとって最高の時間。


《自分にとっての大切なもの
必ずしも目に映ることはない
出会いと別れが生むのは喜びと悲しみ

遠く離れても君のことを
想ってるから 大丈夫
何があってもめげないからさ
笑って見送りに行くよ

見えない時の中で僕らは
巡り逢えたから
何も飾ることのない言葉で君に
伝えたい この想いを》


「ふ~……やっと一番が出来たんだよね」


そう言って、鞄の中から古びたノートとペンを一本取り出した。

どちらとも長い付き合いで、小学校五年生から使っている。

ノートには、自分が作った歌の詞が書いてあった。