空唄 ~君に贈る愛のうた~

自分で言うのもなんだけど、接客業には向いてないと思う。

人見知りが激しくて、初対面の人にはひきつり笑いになってしまう。

そんな私が接客業なんて


「無理」

「なんでっ!いいじゃん、花音してくれよ」


真剣に断った時、一誠が両手にコーヒーを持って話に入ってきた。

それをおじさんと花音の前に置くと


「な~ん~で、嫌なわけ?」


と、拗ねたように訊いてきた。

おじさんはそんな一誠を見て、おもしろそうに笑うと


「こら、一誠。無理強いはよくないぞ」

「無理強いじゃないよ。理由聞かなきゃ納得できねぇんだもん」


―それって、結局は無理強いになるのでは?


二人に聞こえないように心の中で呟く。

ほんとはやってみたい。

しがないと言っても、喫茶店【BULE】の店内はアンティーク調でセンスがいい。

花音はこの店の雰囲気が好きだし、一番はおじさんにいっちゃんがいるなら安心して働ける。