空唄 ~君に贈る愛のうた~

―いっちゃんは優しいなぁ……


一誠は花音のことを理解してくれている、少ないうちの一人。

だから、発作のことも知ってる。

なんで起こったか、聞きたいはずなのに。

また思い出させないように、ちゃんと気をつかってくれてるんだ。



フォークを手にとり、出されたチョコレートケーキを食べる。

あまり食べる気がしなかったけど。

でも、いっちゃんの優しさが嬉しくてお腹も空いたように感じたんだ。


「ん~、ほんとおいしいよ!いっちゃん♪」

「だろっ?これでも一応パティシエの勉強してたんだから」


腰に手をあて、偉そうな顔で一誠が言った。

それが少しおかしくて、ぷっと吹き出してしまい


「ははは!いっちゃん、おもしろ~い」


一度笑うと、中々収まらなくて。

そんな花音を見て一誠も一緒に笑いだす。

二人で顔を見合わせて、いつまでも笑っていた。