遥とさよならしたあの夏の日。

あの後、日が暮れるまでずっと同じ場所に立ち続けてた。

頭の上の方で輝いていた太陽が、時間が経つにつれ傾き
今度は赤い夕日になるまで……ずっと空をみつめていた。

涙は不思議と流れることはなくなって、逆にあったかい何かが胸の中に溢れてきた。

切なくて、悲しくて、仕方ないのにこんな気持ちになるなんて。

きっと、『恋』ってこういうことを言うのかな?って考えたり。

私は遥に出会うまで恋なんてしたことなかったから。







夜空に星が瞬きはじめた。


「もう、そろそろ帰らなきゃ」


もうちょっとだけ空を見ていたかったけど、由紀恵が心配する。

とぼとぼと背を向けて歩きはじめた瞬間、


[花音~。またあしたなっ!]


ふいに遥の声が聞こえた気がした。

勢いよく振り返る、けど、そこには当たり前のように誰もいやしなかった。

自然と笑顔がこぼれる。


「またあしたね、遥」


そうひとりごちて、土手への階段を踏みしめた。