空唄 ~君に贈る愛のうた~

「くっそ……」


言うことを聞かない自分の体に、悪態をつく。


―伝えたいことがあるんだ。


今消えることは出来ない。


「かのんっ」


ただただ姿を想い描きながら、君の名前を呟いた。







その異常は朝目覚めた時からはじまっていた。

いつも通りゆっくり起きて、自分の体を見ると


「っ?!
なんだよ、これ……」


自分の姿が透けていた。

体を通して、下の地面が見えた。

両手をあげて頭の前まで持ってくる。

その手のひらの先の風景が透けて見えていた。


「残された時間は、もうないってことか」


覚悟は決めていたけど、実際目の当たりにするときつい現実だった。


「かのん……」


ここにはいない、今いちばん会いたい人の名前を呼ぶ。

届いてるとか、届いてないとか。

そんなことは頭で考えてなかった。

だけど、彼女なら……




誰の耳にも届かない声だけど、花音なら気づいてくれそうな気がして。


何度も呼び続けた。