空唄 ~君に贈る愛のうた~

一誠から許しが出たので、早めにバイトを抜ける。


「じゃあ、ごめんっ。抜けるね、いっちゃん」


そう言い残すと、ドアを開けて走り出す。





香織を見送ってる時……


[かのんっ]


遥の声がすぐそばで聞こえた。

消えてしまいそうな程弱い、でも確かな意思を持って聞こえた声。


「遥……っ」


泣きそうになるのを、必死に堪える。


今日だけで2度目。

それに、さっきの声は1度目よりもリアルに耳に届いた。



空耳なんかじゃない。

遥が私を呼んでる。



遥に何かが起きてる?

それとも、



別れの時が近づいてるの?













大きな不安は途切れることなく、ただただ強くなるばかりだった。