空唄 ~君に贈る愛のうた~

「じゃあ私帰るね。あっ、花音」

「なぁに?」

「花音の歌、すてきよ。がんばってね」

「……うん、ありがと」


そんなやりとりを見て、一誠は無意識に笑みが溢れた。


―あの花音が、な……


正直なとこ、花音が海斗のことを立ち直ってくれるか心配だった。

いつも何かに一線を置いていた少女が、自分の生きたい道を進めるのだろうかと考えたこともある。


「恋ってすごいな……」


2人で香織に手をふっている時、ぽつりと呟いた。


「何か言った?」

「いやっ、けどお前ほんとすごいよっ!あんなに歌がうまいなんて知らなかった。
豆探しの旅に出てなかったら、親父にもきいてほしかったよ」


我ながら無理な誤魔化しだとは思った。

あちゃー、と中途半端な笑顔でいると


「ねぇ、いっちゃん」

「おぅ?」


自分の名を呼ぶ花音の声が、思っていたよりも真剣だったので
少し声色を強くして返事する。


「今日もうあがっていい?」


そう言った少女の顔は、何故かとても切なそうだった。