空唄 ~君に贈る愛のうた~

「あっ、このお店にギターってあったかしら」

「えっ?」


香織が先ほどのギターに気づき、指をさす。

一誠は、あぁと小さく呟いてから


「家の物置探ってたら出てきたんだ。店の雰囲気にあいそう、と思って持って来たんだけど……こんなとこに置いたっけな?」

「あっ、ごめん。私がさっきいじってた」


すなおに謝ると、一誠は少しびっくりした顔をして


「何、花音弾けるの?」


と、訊いてきたので


「えー、あぁー……少しだけなら」


曖昧に答えると、一誠はギターを掴んで花音の前に差し出すと


「なんか弾いてみてくれよ。俺、弾けないからさっ」

「あっ、私もききたい」


―2人にそんなこと言われると……


ほんとに下手な上、人前で弾いたことは一度もない。

だからこそ橋の下なんかに行って、こっそり歌ってたんだし。


「あぅ、下手だよ?いいの?」

「全然いいよ」


にこにこと笑う2人を見て、もう後にはひけない雰囲気。

小さく吐息をついて、椅子を引き寄せて座る。

深く深呼吸をして告げるのは、音楽のはじまり。