そこそこ賑わっている商店街。

アスファルトじゃなくて、レンガの歩道。

そこが、花音にとっての見慣れた道だった。

その商店街を少し歩いて右に曲がると、そこにはこじんまりとたたずむ一軒の喫茶店がある。

その店のドアを開けると、ちりんちりんと鈴の音がなった。


「あっ、花音。お帰り」

「ただいま、いっちゃん」

「なんか食うか?」

「ん~、いつものジュースがいい」

「わかった」


幼なじみの一誠(イッセイ)のお父さんが経営する喫茶店【BLUE】。

ここに花音はほぼ毎日やって来る。

一誠はその喫茶店の跡取りで、現在22歳。

顔も普通にかっこよくて、細身の長身な一誠はモテるのに
一切、誰ともつき合おうとしないのが花音の疑問だった。

本人曰く、好きな人がいるらしいけど。