珍しく彼女は俺に体を預けて気持ち良さそうに眠っている。

彼女はどちらかと言えば大人びた顔をしている。

それが彼女の悩みでもあるが、眠っている時は違う。

高校生らしいあどけない顔をしているのだ。

それが愛しくて、愛しくて、頬が緩む。

彼女を起こしてはいけない。

わかっているのだが、体は言うことを聞かない。

可愛らしい顔で眠っている彼女の柔らかい唇に自分のをあてがおうとした。

「ねぇ、知ってる?」

が、出来なかった。

彼女の眼は、はっきりとしており、大分前から起きていたのだとわかった。

彼女はくすりと笑いそして俺の唇を手で覆った。

「知ってる?キスをする度に二億個の菌が行き来してるんだって」

俺は唇を覆っている彼女の手を掴み「知らない」と答えると足の上に彼女を座らせた。

彼女は抵抗もせず、くすくす笑いながら俺の首に腕を回し顔を近づけた。

お互いの息がかかる距離。

キスが出来るのに、出来ない。

それは、とても拷問だった。

「菌が行き来するって嫌じゃない?」

「まぁ、な」

菌が行き来するのは確かに抵抗がある。

「だから、キスをするのは止めようか」