---結果、五対一で初戦敗退。

オレ達は優勝候補と呼ばれながら、一回戦で姿を消した。


みんなの目には涙は無かったが、ただ一人だけ帽子を被って俯いているやつがいた。

オレが叩いた頬は、昨日よりも赤く腫れ上がっていて。見るだけで痛々しかった。


「お前が五点もとられるなんてな~。やっぱ俺相手じゃダメだったか」

帰りのバスの中、西条が茶化すようにオレに話しかけてくる。


「たまたま調子が悪かっただけだよ。別に、お前は関係ない」

「嘘つけ。試合中、ずっと神風の方見てたくせに。俺のミットなんか見ないでさ」


「そんなことない」


「何があったのか知らないけど、神風と甲子園行けるの…夏だけだぞ?お前次第なんじゃねーのか?」




そう言われたけど、オレには理解出来なかった。


悠弥が勝手に離れて行ったんだ…。


この時、悠弥の本心をオレは全く知らなかったんだ。

知っていたら、春に全国優勝…できたかもしれないのに。