「…悠弥以外に、キャッチャーは居ませんよ?」 「だからお前を呼んだんだ。神風を説得できんの、永谷しか居ないだろ?」 そう言われたものの、悠弥の部屋の前に立ち躊躇しているオレ。 この前大和に、"多賀直哉"の話を聞いて以来、お互いに気まずい空気が流れていた。 「…東?」 部屋に居るはずの悠弥の声が後ろから聞こえてきた。 「なんでそこに居るんだよ」 「ちょっと走りに行ってた。なんだか、落ち着かなくてさ~。甲子園まで走って行ってたんだぜ?」 オレの気も知らずに、ニコニコしやがって…。