「苓那さん、こんなにおっきく載ってんだ。」


「昔から結構話題になってたらしい。実力は確かだし、大学でも颯太さんの彼女として有名だからな」


今言ったのは雑誌に書いてあったことだけど、結城苓那の実力は本当にスゴいんだって知った。


「うん。でも苓那さんの記事だけで、俺のことなんか載ってないじゃん。」


「ここだよ、ここ」

オレは結城苓那のインタビューの最後の所を指差した。


「『結城苓那の注目選手、神風悠弥』って…俺のこと?」



そこには、結城苓那が注目している選手は誰かという質問に対して「神風悠弥」と答えていた。


そして、その神風悠弥とはどこの学校の生徒か、どんな選手なのか全く書かれていなかった。

ただ…女ということだけ書いてある。


「多分、記者の人は悠弥を探してるはずだ。春になればお前は結城苓那みたいに雑誌に載るようになるんだ」



"女"としてではなく、ひとりの野球選手として。