「…あたしは東のこと、大好きだった。速い球投げる東も、バッティングがウマい東も全部。これは女としてだから。
ごめん…。ずっと言うつもりなかったし、東の気持ちも知ってるから、返事は要らないし聞き流してくれていい。」
初めて、悠弥が"あたし"と言うのを聞いた。
オレは悠弥のこと……
「だった?過去形ってどういう意味だよ。…オレはお前のこと……」
「言わないで。それ聞いたら泣くから」
女のくせにすぐこうやって強がる。
でもオレは…そんな悠弥の笑顔が、悠弥のすべてが好きなんだ。
そっと悠弥の細身の体を抱きしめ、耳元で呟いた。
「オレは今でも、悠弥のこと好きだから。…男の悠弥も、女の悠弥も」
甲子園に行くまで…伝えないという大和との約束を破ってしまった。
でもオレは、今言わないと絶対後悔すると思うから。
夕焼け空を背景に、オレは悠弥と向き合い、そっと唇を重ねた。


