遅刻すれすれに学校につき、三階まで走る。
二年五組のドアをあけた。


「あ、おはよー、ミサト!」

勢いよく開けたもんだからクラスの大半が振り返った。


「はよーす」


次々と女子に挨拶をされながら教室にはいる。


友達なら挨拶はふつうだ。

だが、中学二年にもなると、変に男女を意識してしまい、かんたんにできなくなる。


と、いうのが普通だということには首をかしげたくなるが、この世の中それが普通なんだろう。


でも俺には関係ない。


挨拶なんて女子からしてくる。
俺も挨拶をする。


それが普通、だ。


意識することなんてなにもない。



「おす、ミサト!相変わらずモテんのな」


くしゃっとした嫌味のない笑顔で俺の机にすわるリョウヘイにスクバを渡して、いすにすわる。


「またそれかよ、どこが。」「なんかもう、全部」


俺は苦笑した。
リョウヘイは、いつも俺にそう言う。


モテてるなんて考えたこともねえよ。


口には出さなかった。
リョウヘイは、おれがそう言うことをわかってる、はず。



「あ、そうだ。お前知ってる?転校生くんだよ」


窓の外をのぞきこむようにして見ながら、リョウヘイが言った。



「えっ転校生?マジで?」


「え、お前、知らなかったの?」


リョウヘイは冗談だと思ったのか、しばらくまばたきしていた。


「マジマジ。てかみんなどこでそーいう情報仕入れるわけ?」



「1年のおわりぐらいからウワサになってたじゃねーかよ」


「マジで。俺なんもしらなかったわ!で、男?女?」

重要なポイントだ。

男か女かで、ずいぶんテンションがかわるんだ。