店はそれなりの混み具合だった。
やはり若年層に人気のカフェらしく、若者で賑わっていた。女子高生らしき子達が、イケメンを指差して何やら盛り上がっている。このイケメン目当ての客も多いと見た。
イケメンに案内され、私はホールの一番隅の席に座った。
「このテーブルが一番店全体を見渡せるんだよ」
そう耳打ちされた。
気が利く。こりゃモテる。
「ありがとうございます」とまた頭を下げ、私はアイスコーヒーをオーダーした。
イケメンは手際よくそれを受け、すぐにハルナの方に向かった。何やらハルナが戸惑っているらしい。
イケメンがハルナを助けている。
その図がなんだか面白い。
それに、あんなに慌てるハルナは貴重だ。ユウに見せてあげたい。
私はハルナがバイトを終えるまでの残りの数十分、コーヒーを飲みながら先ほどこのカフェの隣の本屋で買った小説を読んだ。
好きな作家の新作だった。
ハードカバーで購入する書籍は、この人の書く小説くらいだった。
