ぼんやりそう呟いて立ち上がるハルナに、ユウは「待ってるから洗っといで」と言って、特に興味もなさそうにテレビを眺めてた。


手を洗い終えてリビングに戻る。
せっかくのオムライスが冷めてしまう。ハルナが腰を下ろすと、ユウは手を合わせて「いただきます」と言う。ハルナもそれを復唱した。
オムライスはやっぱり美味しかった。

「美味しい?」

そう尋ねるユウの目を見て、黙って頷いた。ユウは嬉しそうに笑った。
ユウは、ハルナの好きなものを知っている。
卵のふんわり加減とか、ご飯の量とか、付け合わせのインスタントのスープとか。
ハルナのちょうど良いもの。
全部を知っているから、なんかたまにムカつく。

ハルナは、最近ユウを見失いつつあるのに。

「ねぇ、来週の水曜暇?」
「うん…講義、なかったはず」
「じゃあ、お出かけしようよ」
「お出かけ?」

首を傾げる。
眼鏡かけて、帽子深く被って変装して?
そんなの嫌だって言ったのに。
それなら家でまったりのんびりする方が良いのに。
そう考えていると、ユウはバックからクリアファイルを取り出した。
それを得意気な顔して、差し出してきた。
受け取って、そこに挟んである資料を見る。
それが何なのか、すぐに分かって顔を上げる。
ユウはあの日と同じ顔をしてた。