「知哉ちゃんに盗られたみたいで哀しかった。悔しかった」




 涙が頬を濡らす。


 そのまま床も濡らしてく。





「それも知ってる。…俺もだよ」





 知哉ちゃんの腕の中で、目を閉じる。





「知哉ちゃんにお父様を重ねてた。知哉ちゃんから、お父様の面影や、色々なものを貰った」




 知哉ちゃんが、うん、と穏やかに笑う。




「…なのに、ごめんなさい。我が儘で。…ただ、傍に居て欲しかったの。独りが嫌だったの」





 涙で声が詰まる。