「……あのな、可愛。よく聞くんだ。…お父様の会社が潰れてしまったんだ」
つ ぶ れ … た ?
「つ…ぶ、れ、た?」
初めて聞く、意味深な言葉。
今なら受ける衝撃も、きっと5歳の私には無かったんだ。
首を傾げてニコニコ笑う私に、お父様は初めて声を荒げたという。
「可愛!いい加減にしろっ!お前何か大嫌いだっ!どうしてそうやって能天気に笑って居られるんだ!お前の様な娘は…恥だっ!」
放たれる言葉は、ほとんどが知らないものだった。
首を傾げる私の頬を、お父様が思い切り叩いた。
泣きじゃくる私の声に、お母さんが気がついて間に入る。
今度はお母さんを殴る鈍い音が耳に響く。
