それでもキミを



「追い詰めちゃった。」


そんな笑って言わないでよ。


「………」



壁に両手をつかれて、逃げられない。



「……」



沈黙が続く。



不意に、栗原の手があたしの髪に触れた。



「…浦野の髪って、綺麗だよな」



「…そう…かな?」



「うん…。」



そっと髪を持ち上げ、キスをした。



神経のないはずの髪なのに、そこだけ熱くなる気がした。



嬉しくて、悲しい。



あたしは、栗原の手を退けて宿題を鞄の中に入れた。


「あっ!!!」



さっさと準備して教室を出ようとドアの前に立つ。



「あたしを襲おうなんて、百年早いんだよっ」



栗原の顔を見て、べーってして教室を出ようとした。