僕は書斎をぐるりと見渡す…。
そして告げた。
「犯人さんに言っておきます。現場を弄らない方が自分の為です。証拠を隠そうとして、ボロを出したりなんかしないで下さいね。」
「今、書斎にある全ての物がどんな風になっていたか、覚えました。…無駄です。」
「僕は探偵です。でも、『僕』は三流ミステリィに出てくる様な三流探偵なんかじゃありません。」
「お願いですから、これが『三流ミステリィじゃない』って事、『証明』して下さいね…?」
僕は─探偵は、冷淡にそう言った。
皆、探偵と眼を合わせようとしない。
むしろ、怯えているかの様にある者は眼をそらしたり、後ろを向いたりしている…。
この事に他の人物よりはなれている刑事も、この時は複雑な色を表情に含ませる。
探偵以外の者は思う…。
一番の嵐はこの屋敷を閉じ込める台風なんかじゃなく、この探偵なのだと……。



