「大丈夫です?」
彼女が、心配そうに俺を見つめる。
「えっ!?あっ!?あー…はい…」
俺、どんだけ挙動不審なんだよ。見事に転がって、お礼の一つも言えないで、不躾に彼女を見つめて。
今、思い出しても、恥ずかしさで、どうにかなりそうだ。もし、タイムマシンがあれば、俺はあの時の俺の元に行って、説教してやりたい。穴があったら入りたいどころじゃない。
穴を掘って掘って、ブラジルまで突き抜けてしまいたくなるぐらい、あの時の俺はどうかしていた。
彼女の手を取ったまま、彼女を見つめる俺に、
「…~あのー…?」
見ると、俺は彼女の手をしっかりと握っていた。
慌てて手を離すと、彼女は少し微笑んで、
「失礼します」
そう言って、歩いて行ってしまった。
俺は、しばらくその場で立ち尽くしてしまったが、駅のアナウンスを聞いて、慌てて会社へと向かった。
