彩のへたくそな鼻歌のせいで、

昼頃に起こされた。

パーテーションを開けると

昼間から黒いドレスに身を包み

どうやって日本から持ってきたのだろう

ばかでかい美顔器を使って

顔のお手入れをしているところだった。

それにしても、

私がどれだけ片づけても、

片づけたそばから

彼女は散らかしていくのが

本当に好きなようだ。

私は、あちこちに散乱した

小物達を眺めてため息をついた。

『この浮かれようは昨日お店に来たあのおじいちゃんとデートだろうな』

と思いながらコーヒーを淹れた。

彩は分からないことだらけの女だけど、

そんな彩の男の趣味が

私には1番理解できない。

コーヒーを片手にリビングに戻って

ソファーに座った。


「何?まだ早いけど、昨日のおじいちゃんと今日はデート?」

「そうだよ、これからセックスしにいくの。」

浮かれた笑顔で言い放った彼女に対して

思わずコーヒーを吹き出しそうになった。

やっぱり、

彩の考える事は私には理解できない。

「・・は?」

「私、あのおじいちゃんの愛人になるの。お金払ってくれるって。幾らもらえるのかなぁ?超楽しみ。」

「あんた、まさかそれ本気で言ってんの?」