リビングに置いたかばんから、

度入りのサングラスを取り出してつける。

これでようやく視界がクリアになる。

床に落ちていた林さんのシャツを羽織る。

彼の香水の匂いがする。

この匂いを嫌いじゃないと思った。

コーラを飲みながら

リビングの壁にもたれて部屋を観察する。

マンションのグレードからして

アマさんを雇っているのは確実で

掃除してある割に、

とても乱雑な部屋だった。


テーブルの上に乱暴に置かれた

フランクミュラー

カルティエ

ロレックスの腕時計たち。

目の前のダイニングテーブルにも、

ごちゃごちゃとものがあふれていて

よく見ればそれらは全部

ブランド物のアクセサリーや

腕時計だったりした。

このテーブルにも

窓際の壁にも

テレビの前にも

バイクと車とファッションの雑誌が、

至る所に積まれている。

床には他にも脱ぎ散らかされた

アルマーニや

グッチの洋服。

空いたままのパーテーションの奥が、

そのままクローゼットとなっていた。

『何をどうしたらこれだけの洋服が必要なのだろう』

と思わざるを得ないほど大量の洋服と靴。

それは確かに成功している人間の部屋。

だけどどこにも愛の感じられない部屋。

私にはそう映った。

しばらくして起きてきた林さんに

私の思ったままを伝えたら、

ほんの少しだけ

切なそうな笑顔を見せた。