土曜日の夜7時。

ここはお店近くの日本食レストラン。

私は今、

林さんの向かいに座っている。

某一流企業の

香港法人の社長である彼は、

おしゃれで

セクシーで

明らかに軽薄そうで

成功者と呼ばれる類の男だ。

彩と林さんがセックスしたのは

ちょうど1ヶ月前の事で、

林さんは

酔っ払って彼に抱きつく彩を

そのまま閉店後お持ち帰りした。

『いくらなんでもそれだけはありえない』

とドン引きしたのは私で、

他のホステスも

彩のあまりの軽さに呆れかえっていた。

翌朝帰ってきた彩は

すっかり林さんに入れ込んで

またセックスがしたいと言っては

がんばってアプローチしていたが

それ以降

林さんが彩を相手にすることはなかった。

林さんが久しぶりにお店に来た2日前

私を同伴に誘った。

同伴といわれて

断る理由はどこにもない。

注文していたビールが運ばれ

乾杯をする。

「なぁ?ちょっと見ない間に、色っぽくなったけど、何かあった?」

「別に、何もありませんよ。お水が板についてきただけじゃないですか?」

「ねぇ、セックスしようよ?気持ちよくしてやるから。」

「は?冗談はやめて下さいよ。乾杯早々そう来ますか?」

「俺今日は、このまま持ち帰るつもりだから。」

「またそうやっていい加減な事を・・・」

「望んでいるのはあんただろ。」

私は、目線を上げて林さんを見る。

裸眼の私には

彼がどんな目をして

その言葉を口にしたのか分からないまでも

口角がいやらしい角度で上がっている様は

確認ができた。

抗う気持ちは沸いてこなかった。