キャビンのベッドの上で、

ようやく1人になった私は、

軽くため息をついた。

ハウスキーピングさん、

今晩の事を

あからさまに期待した表情を浮かべながら

ご丁寧に私の目の前で

ベッドくっつけてくれて

どうもありがとう。

フロントも

ベルボーイも

セキュリティーも

私を見て言う言葉は同じだった。

『船を揺らしすぎるなよ』

という言葉を部屋に着くまで

何回言われただろう。

その都度、

『ねぇ、Justinは4ヶ国語できるけど、この場合は、どの言語で‘イク’と言えばいい?』

『アンダーヘアーはトライアングルとスクエアのどちらがマレーシア華僑には受けると思う?』

『チェリーとセックスするときの心得は?』

こんな毒のこもった

切り返しができる私も

やっぱりここでは相変わらずだ。


これこそが私の愛した、

スーパースターレオの世界だ。

この船の上では、

例え全クルーが入れ替わっても

この手のジョークも

『We must survive』

という合言葉も

普遍的で

これからも変わらないのだろうし

ずっとこのままであって欲しいと思った。





その後、

7階のデッキに移動した私は

船が出航して領域を離れて

あたり一面が海になるまで

ゆっくり流れていく

香港島の夜景をずっと眺めていた。

私は次から次へと

ひっきりなしに恋をするけれど

はじめて見たときから今も尚

私を魅了し続けるこの景色に

今一番恋をしているな

と思った。