ここを抜けると、彼と仲間達がいた。

みんなが元気そうで良かった。

Justinと目が合った。

彼は、

今晩私たちが何をするのか分かっている

という表情をしているので、

私は一人吹き出してしまった。

そして、

これぞ仲間に対する乗船の挨拶だと

云わんばかりの

いつもの合言葉が発せられる。

「みんな、今晩は船がよく揺れるぞ。船酔いにはくれぐれも気をつけよう!」

そう大声で言い放ったのは

私の上司だったAlexだ。

その場にいる全員が爆笑をする。

私はAlex以上の大声で切り返す。           

「そうよ。だから梅干と水は手放さないようにする事ね。」

船酔いを防ぐには、

中国で定番の、塩分が効きすぎた

しょっぱい乾燥梅と水、

そして十分な睡眠をとること。

ここの常識だ。

「志保、あんまり揺らすなよ。彼はチェリーなんだから。」

「悪いけどそれは保障できないね。Justin次第でしょ?」

と言った後で、

「部屋番号は、5006だから、仕事終わったら内線して。」

ニヤリと笑いながら

Justinにそう言い残して

その場を立ち去った。


ゲートを抜けて、

久しぶりのスーパースターレオを見上げた。

ああ、懐かしいな、と思った。

ほんの数ヶ月前まで私もここに居た。

まず頭に浮かんだのは

乗船初日の事だった。