Justinが乗船し2ヶ月が経過しても、

相変わらず誰にでも人なつっこくて

礼儀正しく接しているから

彼の好感度は上がっていくばかりで

彼がそうやって皆に愛されていた事が

私には腹立たしく映った。

寄港地で

2人きりで出入国ゲートでスタンバイ中

あなたは偽善者なのか、

それとも只の世間知らずの馬鹿なのか

と聞いた。

彼は、

自分はそのどちらでもあるからこそ

自分を律する必要がある。

そう言って幼さの残る笑顔を見せた。

その瞬間、

この善人ぶった価値観を

ぶっ壊してやりたいと思った。

だけど本当はそれ以上に私自身が

何かに救われたかったのだろう。



そういう意図を持って仕掛けた恋に

Justinは私の想像よりも簡単に

あっさり落ちた。

私がした事は、

彼の制服のはずれてしまったボタンを

その場で縫い直してあげただけ。

禁欲的で

プロテスタントである彼が、

たった一人に全てを捧げると

言っていた彼が、

私の誕生日に

和英対照の聖書をプレゼントし、

好きだと言って

触れるだけのキスをして

恥ずかしそうに去った後

残された私は一人狂喜した。

それが、彼を陥れたからなのか

何もかもを私に捧げてくれる誰かが

いてくれたからか

もしくは私も恋をしたのか

私には分からなかった。

後からとってつけたような理由なんて

いつでも1つではないからだ。

そうして下船の2ヶ月前に

私も遂にPapaを手に入れた。

Justinは背が高くて

ダンスも絵も上手で

何事においてもそのセンスはよく

私がその時必要としていたものを

全て与えてくれた。