食事の後で話すことはいつも決まって

浩賢の彼女について。

彼女は、私が所属していた部署の後輩。

彼らがうまくいっていない、そう

聞いたときからそうなるだろうとは

思っていたけれど、

私の想像通りで彼女から

もう別れたい。

というメールが届いたようで

浩賢は相当落ち込んでいる

私はもっぱら聞き役に徹して

どうしても別れたくないと主張する彼に

今更あがいても無駄だと思いながら

なるべく

優しいアドバイスをする事にしている。

浩賢は

確かに同じ会社のスタッフではあったけど、

地上のスタッフと船員は

全く別の仕事だ。

船で生きる側は、

やはりどこか命がけなのだから、

良い意味でも悪い意味でも、

生き抜くための処世術に長けてしまう。

それが人の狡さと賢さとたくましさだ

というような事を、

浩賢は何も知らないだろうし、

それを伝えるのは、

私の役目ではなく、

浩賢の彼女であるべきなのだと思う。

私は一時期、

浩賢に軽く片思いをした事もあったので、

あまりにも女々しい浩賢の話を聞きながら、

こいつと恋愛しなくて本当に良かったと、

心から思った。

私達は最低でも週に2回、

こうやって一緒に過ごす。

今の私にとってはこうして

浩賢と一緒にいる時間が、

唯一自分の現状を忘れられる時間で

それは何よりも貴重だった。