乾柴烈火 Volatile affections

彩が私の横でモゾモゾしている。

「どうしたの?」
 と私が聞く。

「あそこのびらびらが、挟まって痛いのよ。」

「は?」

「子供の頃ね、あそこのびらびらを伸ばす癖があってそうしていたら見事に伸びちゃって。普通の状態ではパンツには収まりきらないの。だから、いつもパンツを履くときに、内側にくるくるっと巻いておさめるの。だけど、巻き方が悪いと、時々はみ出しちゃって、パンツと脚に挟まって、‘痛いっ!‘って事になってしまうの。」 

「・・・・。」

「うふっ。」

そのままお手洗いに立つ彼女に、

かける言葉が思いつかない。

彩は、私の想像を遙かに超えた事を

いつでも平気で言う。そういう女だ。


「死ねばいいのに。」

司さんがそう発言すると、

「あの子の虚言癖には本当にうんざりするわ。」

そう言って、秀巳さんが同調する。

周りにいた私以外の全員が同意して、

精神異常だ、

ああいうタイプ破滅するしかない、

自惚れすぎ、

などと色々言い合っている中、

私は思い出していた。

彩のパンツは

お腹もお尻もしっかりサポートする、

俗にババパンとよばれるタイプで、

対する私はお尻を意識したいが為に、

Tバックしか履かない。

先日、

下着が干されているリビングで、

コーヒーを飲んでいた私に彩が、

「志保のパンツって痛そう。うふふっ。」

そう言って笑っていた理由は

そういう事だったのだ。

確かに、

巻かなきゃいけないようなびらびらで

Tバックが履けるわけがない。

私は、その場で一人震えながら

吹き出すのを押さえるのに

本当に苦労した。