2002年に広東省で発生したSARSが

世界中のメディアで放送されたのは

先月の事で、

ニュースを見た両親は、

私が香港に帰る事も

もちろん私の仕事にも

絶対に反対だっただろう。

それでも譲れない事に対して

何を言ったところで

きかないのが私の性格で、

それはこの一家の血筋だ。


泣きそうな顔の母を前に、

こういう時にはいつも冷静な父が

SARSの報道を一通り見た後

「この病気は飛沫感染するものであって空気感染するものではないから安心しろ」

と母を諭して、

具体的に何に気をつけるべきなのか

一通り説明した。

それは私が久しぶりに見る、

医学に携わってきた者の顔をした父だった。

そうして大量のマスクと

手術用のビニール手袋、

消毒液と共に、

私は香港に帰ってきた。