乾柴烈火 Volatile affections

可愛さんが更に口を挟む。

「亜希さん、ほんまありえへんで。ていうかそこまでマゾすぎると、ほんまに気持ち悪いわ。」


そういう可愛さんは、

端から見ていてむかつくタイプの女。

本当は、田舎者のくせに

神戸に住んでいたから

関西弁丸出しの可愛さん。

学生時代に大阪に住んでいたから、

関西訛りが抜けない私も同じ、

私の早口で微妙な関西訛りを

矯正できたのは、

ある意味彼女のおかげかもしれない。


可愛さんはホステスではない。

彼女の本職はバーテンダー。

ママが新しく開店させるBARに

店長として勤務する予定だ。

そのBARが完成するまで

ホステスの仕事もしなければならない。

彼女からは、

私はホステスなんて

大嫌いで軽蔑しています、

というはっきりした

拒絶のオーラが伝わってくる。

何度か街角で見かけた彼女の服装は、

心斎橋でよく見かけるカジュアル系。

露出重視の私と系統は違うものの

おしゃれだと思った。

だけど、

お店で着てくる服に

全く興味がないのだろう、

いつもブラックのスーツを着ている。


私が可愛さんを毛嫌いしたのは、

彼女自身というより、

ホステスとしてのやる気のなさ

だったかもしれないし、

何か秀でたものを持っている人への

嫉妬だったのかもしれない。

彼女がホステスとしてやる気がない事を

仮に譲ったとも、

同席する度

何らかの嫌味を言ってくるところが

一番嫌いだということに変わりはない。

それでも、

彼女が作るカクテルだけは本物で、

それは認めると言う言葉を言うのが

おこがましいと感じる程だった。

お客さんにカクテルを頼んでいいよ、

と言われた時

適当に私の飲みたい感じを伝えて

作ってもらったカクテルは、

私のツボを的確におさえていて

本当においしかった。

少なくとも、

ここ香港では飲めない味だった。