アンドレ・ジットは

数々の名言を世の中に残した

フランスの小説家

という程度の知識はあるものの

名言の全てを

知っているわけではなかった。

数ある名言の中から

わざわざこの言葉を私に選んだ彼は

こんな人生を送っていると思ったのか

それとも

こんな風に生きて欲しいと願っているのか

私には分かりかねた。

どちらにしても

私はそこまで行き過ぎていない俗物。

全く男の願望には付き合いきれないと

手紙を眺めて苦笑いをしながら

こんなにも素敵に

私を映してくれる男の目を

心から好ましく思う。

この関係が

来年も続く事はないのだろう。

潮時だ。

これ以上汚いものを見ないうちに

私が彼の人生に何らかの危害を

与える前に終わらせておきたい

そんな気持ちが手紙から透けて見えた。

私には、

これ以上打つ手がない。

こんな手紙を送った事も彼はすぐに忘れて

世間一般的で言われるところの

幸せを手に入れるだろう。

一生女と金だけには困ることがない。

私の目から見た彼は

そういう男だ。

彼の言葉を引用するのであれば

人の孤独という

とても甘い蜜を吸って生きる

私のような人間にとって

この関係を失うのは確かに痛手で

これを表現する単語は

多分失恋なのだろうと思いながら

この名言と共に美しいままに

彼の脳内で創った私の残像を

いつかまた思い出してもらいたい

そんな事を願った。