数日後、

メルボルンのボーイフレンドから

手紙が届いた。

それには

アンドレ・ジッドの

「地の糧」より抜粋した言葉が

綴られていた。



ナタナエルよ、

君に情熱を教えよう。

行為の善悪を判断せずに

行為しなくてはならぬ。

善か悪かを懸念せずに愛すること。

平和な日を送るよりは、

悲痛な日を送る事だ。

私は死の眠り以外の休息は願わない。

私の一生に満たし得なかった

あらゆる欲望、

あらゆる力が

私の死後まで生き残って、

私を苦しめはしないかと思うと、

慄然とする。

私は、

心の内で待ち望んでいたものを

ことごとくこの世で表現した上で

満足して

或いは絶望しきって死にたいものだ。