着信は、永田さんだ。

「もしもし。」

「志保?俺だけど、飛行機着いたみたいだけど、まだ?」

「ごめん、入国審査で捕まったわ。」

「え、マジで?大丈夫?」

「ええ。もう抜けたわ。今から出る。」

そういいながらゲートを出た私は

アライバルロビーで立って

私を待っている彼の姿を捉える。

目が合った私達は笑いながら

携帯電話での会話を続ける。

「俺、すごく寂しかったんだけど。」

「嘘つき。本当は家族サービスに励んだでしょう?」

「まぁね。でも会いたかったのは嘘じゃない。」

「本当?私と同じ事を考えてくれていたの、嬉しいな。私も会いたかったよ。」

そう言って電話を切った私は

目の前の永田さんの唇にキスをして、

「ただいま。」

そう言って笑った。
 




私が動く時、

私を見送る男と出迎える男が

それぞれ空港にいる確率は

驚くほどに高い。

港ごとに女を持つ船員でさえ

私の足元にも及ばないと

自負していたくらいだ。

そう、

ある意味私はとても恵まれている。

見送ってくれる人や

出迎えてくれる人がいる旅は

幸せな旅だ。

そして、やっぱり旅と恋の相性は良い。

旅立ちと帰ってくるという行為のみが

延々と繰り返される

空港という場所とその用途が

恋を盛り上げるイベントに効くのは

決して私だけではないはずで

私は無自覚の内に

空港をしっかり活用して

幸せな旅ばかりをしていた。