亜希さんは、今日もどこかが痛いらしい。
さっきから痛そうな顔をしている。
出張ベースで香港にやってきては、
ここで働いている司さんが口を開いた。
「ちょっとぉー?亜希、なんか痛いの?一体どうしたのよ?」
「私ね、今日は、舌のコケをとることにはまっちゃって、ほら」
そういって亜希さんは舌を出す。
ゆっくりと
数箇所から血が滲み出し
赤い水玉模様を浮かばせた後で
歪んだ線を描いて
血の模様ができていく様は、
接客前でまだ眼鏡をかけている
私にも見えた。
「うわぁー、あんたはまた、何てことをしてんのよ。本当に信じられないわ、この馬鹿女が。」
この馬鹿女が、
の部分だけ異様に低い男声をだしながら
司さんは足を組み替えた。
裁縫が大好きという彼女ご自慢の
お手製ミニ丈のワンピースからは、
美しくスレンダーな足が出ている。
ニューハーフの司さんは、
タイでグラビアアイドルをしている。
女の私から見ても
非の打ち所がない完璧な体つき。
7歳の時に
自分が女だと理解した彼女は、
中学校の時には
両親に内緒で
定期的に女性ホルモンを注射していた
と言っていた。
手を打ったのが
成長期の最中だったのが幸いして、
「他のニューハーフよりも私は女っぽいの!」
そう自負している。
それはその通りで、
「このお店の中にいるニューハーフさんは誰でしょう?」
とママがお客さんにクイズを仕掛けたとき、
ニューハーフだと指をさされたのは
他ならぬ私だった。
彼女以外にニューハーフを知らない私に
比較のしようもないが、
彼女は本当の女よりも女っぽい。
それは、
いい意味でも
悪い意味でも。
どうすれば自分が可愛く魅力的に映るかを
知り尽くしていている彼女に、
私は嫌われているようだ。
さっきから痛そうな顔をしている。
出張ベースで香港にやってきては、
ここで働いている司さんが口を開いた。
「ちょっとぉー?亜希、なんか痛いの?一体どうしたのよ?」
「私ね、今日は、舌のコケをとることにはまっちゃって、ほら」
そういって亜希さんは舌を出す。
ゆっくりと
数箇所から血が滲み出し
赤い水玉模様を浮かばせた後で
歪んだ線を描いて
血の模様ができていく様は、
接客前でまだ眼鏡をかけている
私にも見えた。
「うわぁー、あんたはまた、何てことをしてんのよ。本当に信じられないわ、この馬鹿女が。」
この馬鹿女が、
の部分だけ異様に低い男声をだしながら
司さんは足を組み替えた。
裁縫が大好きという彼女ご自慢の
お手製ミニ丈のワンピースからは、
美しくスレンダーな足が出ている。
ニューハーフの司さんは、
タイでグラビアアイドルをしている。
女の私から見ても
非の打ち所がない完璧な体つき。
7歳の時に
自分が女だと理解した彼女は、
中学校の時には
両親に内緒で
定期的に女性ホルモンを注射していた
と言っていた。
手を打ったのが
成長期の最中だったのが幸いして、
「他のニューハーフよりも私は女っぽいの!」
そう自負している。
それはその通りで、
「このお店の中にいるニューハーフさんは誰でしょう?」
とママがお客さんにクイズを仕掛けたとき、
ニューハーフだと指をさされたのは
他ならぬ私だった。
彼女以外にニューハーフを知らない私に
比較のしようもないが、
彼女は本当の女よりも女っぽい。
それは、
いい意味でも
悪い意味でも。
どうすれば自分が可愛く魅力的に映るかを
知り尽くしていている彼女に、
私は嫌われているようだ。

