「ありがとう。実は私、彼氏ができたの。」

「そうだったの。おめでとう。で、相手は誰?」

「B株式会社の・・・」

「え?もしかして佐藤さん?」

「そう」

「え?不倫してんの?」

「うん、分かっているけど。私、佐藤さんの事が好きなの。」

「それは、妻の座を勝ち取りたい不倫?それとも違う不倫?」

「今はまだ妻の座を、とは思ってないよ。佐藤さん単身赴任だからさ、彼が結婚しているっていう実感が沸かないの。」

「なるほどね。」

「志保ちゃんは?永田さんとラブラブだよね?」

「おかげさまで。」

「閉店後もずっと一緒にいるよね。」

「いや、遅くても4時くらいには戻っていくよ。」

「家族は香港にいるじゃない?ばれないのかな?」

「気がつかないわけがないでしょ?ハラワタが煮えくり返って、全部調べつくした上で一時的なものだから放置しているか、調べたい欲求を理性で抑えて見ないふりをしてあげているか、どちらにしてもそういう度量がある上で、彼は家庭を捨てない事もちゃんと知っていて彼を信じている。まぁ素敵な奥さんだと思うよ。」

「志保ちゃん、それって、もしかして奪いたいの?」

「まさか。負け戦するほど馬鹿じゃない。」

「そっか。ならいいけど。」

「人生色々だね。」

「うん。私、でも自分が不倫するとは思わなかった。」

「それは私も。大丈夫?」

「大丈夫。」

「恵理ちゃん。いつか結婚をして夫に不倫をされた時、許せる?」

「多分許せない。志保ちゃんは?」

「絶対に許さない。」

「私達、自分勝手だね。」

「だね。」

そう言って、私達は笑いあった。