♪~♪~♪ ズボンのポケットから、聞きなれた着信音。 「ごめん」、と雅にひとこと言うと、通話ボタンを押す。 「もしもし?」 『あー凛ー! なんで電話してくれないの?』 甲高い女の声が、耳に刺さった。 「え…えー……ごめん、忘れてた」 『もう! 空いてる時は電話してって言ってたのに!』 「だから悪かったって」 忘れてたんだから仕方ないだろ。 そう思ったけど、それを言うとますます相手は気を悪くしそうだからやめておいた。