「本当に、会えた。」

「あ。良かったです。間に合ったみたい。」

「会いたいって、一生懸命お願いしたの。」

「ありがとうございます。」

「ねぇ、月見て?」

「え?」

「ほら、すごく赤いの。」

「本当ですね。」

「あまりにもきれいだから、ずっと見てた。私、日本に帰国するから。もう、ずっと一緒にいる。ちゃんとサイパンにも彼氏にもお別れしてくるから。」

「待ってます。」

「待っていて、そんなに時間はかからないから。」

「はい。大丈夫です。これまでずっと、待っていましたから。」

「そうだね。本当に、今まで待っていてくれてありがとう。今はこれで勘弁して。」

そう言って私は彼を抱きしめた。

彼の身体がこわばって、

顔にチックがでる。

「慣れないね?」

「そうみたいですね。」

「でも、触れておかなきゃ。もし私の飛行機が落ちたら後悔するのは私だからね?」

「何を言うかと思えば・・・。」

「絶対に起こりえないとは言えない事を知っているでしょう?」

「・・・はい。」

「私、今度はもう手加減しないよ。私の愛は怖いよ?受け入れられる?」

「はい。受け入れます。」

「ありがとう。」

「こちらこそ。」

「じゃ、行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」


私は、笑いながら、

激しく泣きそうになるのを抑えながら、

走るようにゲートを抜けた。