久しぶりの帰国なのに、

私は友達にさえ、

会いたいとは思わなかった。

会いたい人は、本当に誰もいなかった。



借りてきたDVDを母と観た。


私が大好きな映画、ポネット。

久しぶりにフランス映画が観たかった。

ハリウッド映画ばかりを観ていると、

確かに楽しいし名作もあるけれど、

ものの捉え方がはっきりしすぎて、

単純明快なお馬鹿さんだけを培養する

そんな気がするから。

それに引き替え、フランス映画は

はずれも多いが台詞と映像のセンスが独特で

昔は色々なフランス映画をよく観ていた。


死んだ母を待つ子供の泣ける話なのに、

観ていて前と感覚が違う事に気がついた。

前に観たときは、

幼いポネットに感情移入して

思いっきり泣けた名作は、

今はポネットをこの世に遺してしまった

「母親」の気持ちが、痛い。


ポネットを見終わった私に、

母が見事な追い打ちをかけた。

「あなたが中絶や、レイプなどされてなくて本当に良かったわ。」

『お母さんごめんね。言ってないだけでレイプも中絶も経験済み。』

「・・・そうだね。」

と苦笑いながら、罪悪感と共に

それまですっかり私の辞書から抜けていた

聡を思い出した。