それは点滴のせいなのかもしれなかった。

それでも、本当にこんな事があるなんて

信じられなかった。


『どうして、私はこんなにも暖かな

何かに包まれているのだろう?

これから私は、

あなたを殺すと決めているのだから

今こそつわりでも何でもいいから

反抗くらいしてよ。』


私には、

このどうしようもなく暖かくて

優しい感じが殺される前の

「命の声」に思えた。

この私をまるごと受け入れている、

この子がそう言っていると

分かった。


それまで自分の為にしか泣かなかった私。

お腹の命の本当の素晴らしさを無視して、

こんなに素晴らしいものを簡単に殺す、

そう決めてきかなかった。

ここに来るまで、命の重さを

思ってやりもしなかった。



こんなにも暖かいのに。



私自身の浅はかさを呪って、

一人で号泣しながら

手術の直前になってようやく、

命を殺す、と言う事が

どういう事かを

カラダで理解した。