私と彼は、

電車に乗って私の駅で一緒に下車し、

彼の最終電車が来るまで

駅のホームで話をするようになり

それが習慣になっていった。


そんなある夜に、

彼が話した彼の生い立ちから、

私がどうしても知りたかった

彼の核心の一部に少しだけ触れた。

何故彼がこんなにも刹那的なのか、

少しだけ解明できた夜の月は、

本当にきれいだった。

私は、どこか刹那的で

可哀想なタイプの人間の持つ闇に

どうしようもなく惹かれやすい。

それはこの時の私自身が、

まだ私の人生をちゃんと生きる事

なく俯瞰をし続けていたからで、

それでも彼に対する感情は

紛れもない恋で、この晩には

もう恋だと認めざるを得なかった。


聡の心の闇に触れて、

私は決してこの世の中で

ひとりきりではない、

少なくとも、

彼と私はとても近いところにいる。

きれいな月明かりの下で、

そう感じていた。